アート紙とミラーコート紙の違い
アート紙やミラーコート紙についてのご質問の多くは、「違いは?」という内容が圧倒的に多いです。2つの素材の最大の違いは表面の光沢感だけ。ミラーコート紙が光沢とすると、アート紙は半光沢です。ツルッとした表面のミラーコート紙に対して、アート紙はやや光沢程度の輝度となります。シールの構造自体はどちらも同じで、上質紙ベースの表面に光沢のコート処理をしています。厚みはどちらも73kgが標準となっており対応している粘着剤も基本的には同じです。紙素材なので耐水性はありませんが、コート処理している分、非コートの上質紙などと比べると表面に僅かな撥水性があります。気になるお値段ですが、当工房ではどちらの素材も同額です。
※アート紙のみ厚み90kgと110kgの取り扱いがあります。どちらも粘着剤は強粘着。
どのように使い分ける?
困るのが使いわけです。同じ仕様なのでお好みの問題なのですが、選択ポイントとしては意匠性を含む視覚効果の問題があります。この場合に気をつけていただきたいことは、どちらの素材に印刷してもインキの付着している箇所の再現は、ほぼ同じということです。アート紙に黒ベタ白抜きデータで印刷してもミラーコート紙に同じ印刷をしてもインキの付着箇所の光沢感は同じになり、素材がむき出しになっている箇所のみ違いがでます。白抜きもないまったくのベタであれば印刷会社でもアート紙か、ミラーコート紙かの判別ができない場合もあります。なので意匠性を考えて素材を選ぶ場合は、素材が表面化する箇所を「生かす」か「生かさない」かがポイントになります。「どちらでもいい」と思われる場合は、印刷会社に任せるのも良いでしょう。
もう一つのポイントは業界の一般的な仕様を把握しておくことです。A業界のBアイテムにはアート紙がよく使われており、C業界のDアイテムにはミラーコート紙がよく使われているといったことです。一例としては食品関連ではミラーコート紙がよく利用されています。様々な理由があると思いますが、シールやラベルを貼った商品を陳列した時の見栄えが良いことなどが理由として挙げられます。逆にアート紙は光沢感が抑えられているので少し落ち着いた雰囲気を出したい場合のショップシールや印刷内容をよく読んでもらいたい表示シールなどに利用されています。
耐水加工は可能か?
アート紙やミラーコート紙に対して「耐水加工はできますか?」というご質問をいただくことがあります。こちらの回答は不可です。恐らく表面にラミネートを貼ることで耐水加工になるという意味合いでご質問されていることと思われますが、アート紙もミラーコート紙も紙素材です。これらの表面にラミネートを貼っても表面に撥水性がでるだけで、素材自体が耐水性に変わる訳ではありません。耐水加工というもの自体が存在しないのです。夏場に氷漬けの水を入れた容器にドリンクを入れて販売されている光景がありますが、このような場合のドリンク容器に貼るシールはアート紙やミラーコート紙を使うと素材に水分が染み込みシールが剥がれてしまいます。ラミネートを貼っても側面から水分が染み込むので同じです。冷蔵保存程度であれば、ある程度は使えますが、明らかに耐水性を必要とする環境の場合は紙素材ではなく、フィルム素材をお選びください。
こんな用途には注意が必要
アート紙やミラーコート紙にラミネートを貼った場合に起こる現象の一つに「反り返り」があります。ラミネートの反発でシールが反り返る現象です。この状態でも平面(平滑面)に貼るのであれば普通粘着剤でも問題はありませんが、円筒形の容器に巻きつけて貼る場合などは、ラミネートの反発でシールが浮いてくることがあります。このような場合、粘着剤は強粘着剤を使ってください。容器の径が小さい被着体(対象物)やその素材によっては強粘着剤を使っても自然に剥がれてくる場合もあります。その場合は素材を薄くするなどの対応が必要になるのでコストが上がってもフィルム系素材に変更されることをお勧めします。
※関連事例
小さな筒状の対象物に貼るとシールが剥がれてくる現象
そのシールの表面に保護ラミネートは必要ですか?
まとめ
アート紙もミラーコート紙も光沢感以外は同じですが、迷われた場合は以下の内容に着目して判断してみてください。
1:アート紙とミラーコート紙の違いは表面の光沢感。
2:どちらの素材に印刷してもインキの付着箇所は同じような仕上がり。
3:業界によって一般的仕様あり。周りを気にする場合は事前リサーチを。
4:どちらの素材も紙素材。ラミネートをしても耐水素材にはなりません。
5:ラミネートの反発に注意。平面以外への貼付け時には強粘着剤がお勧め。
ちなみにラミネートを貼るとアート紙でもミラーコート紙でも同じ仕上がりになるので、ラミネートを貼る場合は迷わずに済みます。